慶應義塾大学薬学部 教育・研究年報2022
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研究概要 大学院 実務実習事前学習(実習) [通年(8単位・薬学科必修)] 症例検討④ 齋藤(4コマ) 症例検討⑤ 松﨑(4コマ) 入院①② 木村(7コマ) 総合実習 松﨑(4コマ) 症例検討④,⑤では、各分野から1症例を学生に提示して、SOAP方式により症例の検討を行った。症例の病態や治療方針について、SGL形式でディスカッションやプレゼンテーションを行った。入院①,②では入院時の患者対応について模擬患者を用いたシミュレーション実習を実施した。総合実習では、服薬指導における基本的な技能・態度について実習を行った。 病態薬物治療学特論[春学期(1単位・修士課程)] 齋藤(1コマ)、松﨑(1コマ)、木村(1コマ) 難治性がんオルガノイドを用いた創薬研究、体外診断用医薬品の開発、加齢性疾患の病態・治療について講義を行った。 病態薬学特論[春学期(1単位・博士課程)] 齋藤(1コマ)、松﨑(1コマ) 難治性がんオルガノイドを用いた創薬研究、体外診断用医薬品の開発について講義を行った。 1.オルガノイド培養による難治性がんのin vitro前臨床モデルの構築と創薬研究への応用 近年、幹細胞の新たな培養技術として、オルガノイド培養法が注目されている。オルガノイド培養法は、特定の増殖因子を加えた無血清培地で3次元培養を行うことで、幹細胞を含む組織構造体(オルガノイド)を培養・維持する技術である。このオルガノイド培養技術を用いて、特に難治性がんの代表である胆道がんや膵臓がんの臨床検体よりがん幹細胞を分離・培養を行った。樹立されたオルガノイドはがん幹細胞の特性をin vitroで検討する上で大変有用な研究ツールとなる。幹細胞の可塑性、すなわち多分化能の獲得には、エピゲノム変化やマイクロRNAをはじめとするnon-coding RNAが非常に重要な役割を果たしており、エピゲノム変化やマイクロRNAの発現変化を網羅的に解析することで、がんの発生・進展の分子メカニズムの解明を試みた。さらに同定されたエピゲノム異常やマイクロRNAの発現異常を是正する新たな小分子化合物の開発を行った。 また、難治性がん組織より樹立したオルガノイドは生体内の腫瘍の特性を反映していることが確認され、in vitro前臨床モデルと考えられる。樹立した難治性がん由来のオルガノイドを用いて既存薬による薬剤スクリーニングを行ったところ、興味深いことに、抗腫瘍薬以外にも抗真菌薬であるアモロルフィンやフェンチコナゾールおよび高脂血症の治療薬であるセリバスタチンなどがヒット化合物の中に含まれていた。これらの薬剤は既に安全性が確認されているため、胆道がんや膵臓がんに対する安全かつ有効な治療薬の候補となることが期待される。今後もin vivoでの抗腫瘍効果の確認、非臨床POCの取得、臨床治験の実施に向け、さらに研究を進めていく予定である。 2 薬物治療学講座 98 薬物治療学講座

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