自己点検・評価 Ⅰ.教育について Ⅱ.研究について 討が必要と思われた。また近年、肥満の病態形成には脂肪細胞の加齢様変化が関与している可能性が強く示唆されていることから、脂肪細胞の分化を誘導するPPARγアゴニストのひとつであるピオグリタゾンの効果について検討し、脂肪細胞における老化マーカーの加齢様変化が減弱化する可能性が示唆された。現在は褐色脂肪細胞に対する影響についても検討を行い、その成果の一部を報告した。 2022年度も新型コロナウイルスの感染拡大が続いていたが、感染予防を行いながら、対面での講義が再開された。やはり対面での講義は、臨場感があり、リアルタイムで質問が出来るなどの多くのメリットがあると感じられた。一方で、遠隔講義のメリットもあるため、今後は対面講義をメインとして、一部を遠隔講義とする形が良いと考えている。 薬物治療学講座では、講義や実習などを通じて、単に薬学の知識を教えるだけではなく、チーム医療での役割や患者さんへの接し方、医療倫理などを含めた、総合的な薬剤師の教育に積極的に取り組んでいる。医療の進歩はまさに日進月歩であり、最近は薬剤師国家試験問題においても極めて高度な臨床情報について細かく問われるようになってきている。そのため、特に臨床医学系の講義に際しては、学生が効率良く臨床医学への理解を病態から薬物治療まで深められるよう、努力を行っている。教員自身も慶應義塾大学病院での診療活動などを継続することで研鑽を重ね、常に学生に最新の生きた医療情報を提供できるように心がけている。患者さんの病態を十分に把握し、薬剤の効果や副作用の情報に基づく最適な処方提案を行うことのできる有能な薬剤師の育成を目指している。 研究面では、学生の自主性および研究に対する興味や希望を最大限尊重しながら、研究室で行なっている研究に興味をもてるように指導を行っている。消化器慢性疾患や難治性がん、生活習慣病、老化の分子機序の解明および新規治療法の開発に関する研究を精力的に行なっている。研究成果は、卒業論文や修士・博士論文にとどまることなく、国内外の学会や英文論文などを通じて世界に発信するように心がけている。今後も、一流の英文科学誌への論文掲載や国際学会での口頭発表などを通じて、学生が国際的に活躍できるように指導していきたい。様々な場面で活躍できる優れた人材を社会に輩出すべく、コミュニケーション能力、プレゼンテーション能力などを含めた総合的な人材教育を積極的に実践している。最近の就職活動の長期化に伴い、研究の進行に支障を来す学生も見受けられたことは今後の課題である。 研究に関しては、上述のように、①難治性がんのin vitro前臨床モデルの構築と創薬研究への応用、②腸管上皮オルガノイドを用いたステムセルエイジングの解明、③エクソソームや内包されるmicroRNAに注目した創薬開発、④肥満・生活習慣病に対する食事・運動・薬物療法と抗老化効果などをテーマとした研究を行っており、生活習慣病、消化器疾患、がんおよびがん幹細胞、老化などの分子病態の解明と画期的な新薬の創製を目指している。上記の研究テーマの他にも、東京医科大学医学総合研究所分子細胞治療部門および医学部精神神経科学教室との共同研究を積極的に推進している。 新型コロナウイルスの感染予防のため、学生の研究室での行動制限やカンファレンスの遠隔開催などを行なった。その結果、全体的な研究時間の減少や学生とのコミュニケーション不足などから、講座薬物治療学講座 5 薬物治療学講座 101
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