quercitrin, isoquercetin, reynoutrin) について OATPs 阻害活性を評価した。その結果、両 OATPs において、検討したすべての成分はいずれの基質輸送も濃度依存的に阻害した。OATP1A2 介在性 FEX 輸送に対しては、各成分の阻害強度は quercitrin > quercetin > avicularin > reynoutrin > hyperoside > isoquercetin の順となり、成分間で最大 10 倍程度異なった。また、OATP2B1 介在性 estrone-3-sulfate 輸送に対しても、avicularin および quercitrin が最も強く阻害した。 なお、本研究内容については、日本薬学会第 143 年会 (2023 年 3 月) において報告した。 Ⅵ Talinolol の消化管吸収に対するクランベリージュースの影響 当研究室ではこれまでに、クランベリージュース (CJ) が消化管に存在する取り込みトランスポーターである有機アニオン輸送ポリペプチド (OATP) 1A2 および 2B1 を阻害することを報告した。さらに、マウスにおいて CJ が OATPs 基質 fexofenadine 経口投与後の血漿中濃度-時間曲線下面積 (AUC) を 50% 低下させることを報告した。しかし、OATPs は分子種間で基質認識性が異なり、かつ、それぞれに複数の基質結合部位が存在することから、CJ の影響は基質によって異なる可能性がある。本研究では、マウスを用いて、OATPs 基質 talinolol (TLN) の消化管吸収に対する CJ の影響を評価した。その結果、CJ の併用により、TLN の最高血漿中濃度および AUC はいずれも対照群の 50% 程度に低下したが、平均滞留時間に有意な差は認められなかった。よって、CJ は消化管の OATPs 阻害して TLN の消化管吸収を低下させたと考えられる。以上より、CJ はさまざまな OATPs 基質薬物の消化管吸収を阻害する可能性が示された。 なお、本研究内容については、日本薬学会第 143 年会 (2023 年 3 月) において報告した。 Ⅶ 消化管上皮細胞単層膜の傍細胞経路透過性亢進細胞の作製と透過量変動解析 消化管上皮細胞における受動拡散経路の一つである傍細胞経路は、タイトジャンクション (TJ) により物質の透過性が制御される。各種 TJ タンパク質は、long noncoding RNA (lncRNA) SPRY4-IT1 により発現が誘導される。これまでに潰瘍性大腸炎など消化管炎症時に TJ タンパク質の発現低下が報告されているが、実際に TJ の破綻により傍細胞経路を介した物質の透過性がどのように変化するのか定量的な評価はなされていない。本研究では、small interfering RNA (siRNA) SPRY4-IT1 を処置した Caco-2 細胞単層膜を用いて、細胞間接着強度の変化が物質透過性に与える影響を定量的に明らかにした。その結果、単層膜形成指標である膜抵抗値は siRNA SPRY4-IT1 添加 24 時間後において、添加直前の 80% 程度に低下したが、96 時間後までそれを維持した。96 時間後の単層膜において、傍細胞経路マーカーである inulin (MW; 5000) のみかけの透過係数は非処置群と比べ 1.1 倍に上昇した。このとき、各 TJ タンパク質 (claudin-1, 3、occludin、JAM1) 発現量は非処置群と比べていずれも低下した。以上より、今回の条件にて MW 5000 程度の物質透過性が亢進した単層膜が作製された。 Ⅷ Ultrafine bubble が薬物の傍細胞経路を介した消化管吸収に及ぼす影響 Ultrafine bubble (UFB) は直径 1 µM 以下の気泡であり、UFB の水溶液 (UFB 水) はその特徴的な性質から多くの産業分野で使用されている。薬物の消化管吸収経路である受動拡散には経細胞および傍細胞経路があり、当研究室ではこれまでに、UFB 水が経細胞経路を介した薬物吸収に与える影響を評価してきた。しかし、傍細胞経路を介した薬物の細胞単層膜の透過性に対する影響は明らかになっていない。そこで本研究では、Caco-2 細胞単層膜を用いて、消化管上皮における傍細胞経路の物質透4 ■■■■■■■■■ 120 臨床薬物動態学講座
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