自己点検・評価 I.教育について (日本薬学会第143年会にて口頭発表,医薬品情報学誌に採録) 薬剤師が造影剤投与について他職種と議論する機会の有無について調査した.10施設から回答が得られた(回収率63%).回答施設のうち,7施設において造影剤投与に関する内規等があった.内規では,造影剤アレルギー歴や喘息の既往,治療中の気管支喘息をもつ患者に対して,「造影剤を投与しない」,「造影剤を変更して投与する」等の対応が定められていた.多くの施設において,外来患者は入院患者と比較して,造影剤使用前の副作用リスク評価の機会および,造影剤副作用リスク管理への薬剤部の関わりは少なかった.入院患者に対する介入は,薬剤管理指導業務,入院時初回面談等であった一方で,外来患者では,入院を予定する患者に限定した介入に留まっていた.回答施設のうち,5施設の薬剤師が,医師や放射線技師等医療従事者と造影剤投与に関する議論を行っていた.多くの施設において,造影剤アレルギー歴や喘息などの背景を持つ患者に対して,細心の注意を払いながら造影剤投与が実施されていることが示唆された.外来患者に対する造影剤のリスク管理には改善の余地があり,病院薬剤師による外来患者への介入を増やす方法を模索する必要があると考える. 本年度は,「医薬品情報学1」,「医薬品情報学2」の科目において,薬物治療に必要な情報を医療チームおよび患者に提供するために,医薬品情報ならびに患者から得られる情報の収集・評価・加工に関する基本的知識,ならびに,臨床研究の種類・解析方法などに関する基本的知識に関する講義を行った.また,「実務実習事前学習(実習)」の「医薬品情報」では,これらを活用するための基本的技能と態度を身につけるための実習を実施した.昨年度に引き続き,本年度はすべて対面の実習として実施した.実習実施後のアンケート調査においても,実習に対する高い評価を得ている. 配属学生に対する教育を円滑に実施するため,メッセージングアプリslackを研究室内の連絡や研究に関するコミュニケーションツールとして2021年度に続き利用した.こうしたオンラインコミュニケーションの重要性が十分に浸透したこともあり,学生同士・学生と教員間のコミュニケーションが活発に行われた.研究活動を円滑に進められるようにするため,研究進捗状況を毎週の週報として学生に報告してもらうとともに,隔週のグループミーティングで学生が自身の研究の進捗についてプレゼンテーションを行い,自身の研究を振り返って整理する機会を多く設けた. 講座セミナーでは,研究進捗の報告を講座学生全員に対して実施した.本講座では,研究進捗報告におけるメルクマールを作成し,学生が目指すべき研究者像を提示するとともに,自身の研究の新規性と意義に関して十分にプレゼンテーションできるように指導した.これらの研究進捗の報告に加えて,学術英語論文の読解力を養うための論文紹介ゼミを週1回開催した.本ゼミでは自身に関連する研究分野の最新の英文学術誌を取り上げて読解することで,自身の研究分野の領域に関する理解を深めるとともに,読解した内容を知識が乏しい聴衆にわかりやすくプレゼンテーションすることを目的とした.発表にあたり,研究論文の新規性と意義について熟考するとともに,それらをわかりやすく提示可能な資料を作成するよう指導した.本ゼミの準備・実施を通じて,自身の研究内容についての理解を深めるとともに,研究者にとって重要な,内容を俯瞰的に見直してわかりやすく再構成する能力を磨くことができたと考えられる. 医薬品情報学講座■■ 医薬品情報学講座 131
元のページ ../index.html#135