後及び9時間後において、生理食塩水投与群と比較して有意に浮腫率を減少させた。またAUCbloodは本研究の投与量範囲において線形を示した。興味深いことにAUCbloodとAUCedemaは有意な相関関係を示した。TZDはカラゲニン誘発の足蹠浮腫を用量依存的に抑制し、TZDの抗炎症効果が示された。またその効果はAUCbloodに依存した。 Ⅳ.DDSに関する研究 1)一酸化炭素を基盤とした急性呼吸窮迫症候群に対する新規治療法の検討 急性呼吸窮迫症候群 (ARDS) は様々な基礎疾患に併発し、急性に肺組織の炎症や呼吸不全を呈する疾患である。本疾患に対する治療法として外科的な呼吸管理療法の技術が進歩しつつあるものの、その死亡率は約40%程度と未だに高い水準であるため、革新的な治療法の開発が望まれる。我々は新たな治療シーズとして多彩な生理活性作用を有するガス分子である一酸化炭素 (CO) に着目し、CO供与体としてCO結合型ヘモグロビン小胞体 (CO-HbV) を利用して、ARDSに対するCOの有用性を検討した。内因性COを産生するC57BL/6Hmox1+/+ ARDSモデルマウスにおいて、BALF中の細胞数・タンパク質濃度の増加や顕著な肺の組織傷害、炎症性サイトカイン (TNF-α、IL-1β、IL-6) の上昇が確認された。興味深いことに、C57BL/6Hmox1+/+ ARDSモデルマウスと比較して、内因性COを産生しないC57BL/6Hmox1+/- ARDSモデルマウスではこれらの症状が重症化しており、ヘムオキシゲナーゼ-1 (HO-1) がARDSの発症と進展に重要な生体防御因子であることが推察された。そこで、HO-1による生体防御機構の本質がCOであると仮定し、COのARDSに対する有用性を評価するためにCO-HbVを投与して同様の検討を行った。その結果、CO-HbV治療群ではC57BL/6Hmox1+/- ARDSモデルマウスにおける肺組織傷害や炎症が有意に改善された。一方、HbV治療群では抑制されなかった。さらに、COは肺組織に対する好中球浸潤を抑制し、BALF中の細胞より抽出されたMPOやNox2の活性化を抑制した。以上の結果より、COは炎症や酸化による組織傷害を抑制した結果としてARDSの進展を抑制したと推察された。以上より、COはARDSの進展を抑制することが期待されるとともに、CO-HbVを利用したCO供給療法は新たなARDS治療法として有用である可能性を秘めていると考えられた。 2)メトヘモグロビン-アルブミンクラスターの硫化水素中毒解毒剤としての有用性評価 硫化水素はミトコンドリア中シトクロムcオキシダーゼと結合し、電子伝達を直接阻害することで致死的な急性中毒を引き起こす。例年、硫化水素による中毒事故が発生しているものの、承認を得た有効な解毒剤や治療法は存在しない。そこで、メトヘモグロビンが硫化水素と迅速に結合することに着目し、硫化水素中毒解毒剤としてメトヘモグロビンをアルブミンで被覆したメトヘモグロビン-アルブミンクラスターを創製した。メトヘモグロビン-アルブミンクラスターの構造特性及び硫化水素中毒解毒能の評価を行った結果、メトヘモグロビン-アルブミンクラスターはメトヘモグロビン1分子に平均3分子のアルブミンが結合した約15 nmの均一な粒子であった。また、硫化水素添加によりメトヘモグロビン由来のピークが硫化水素結合型メトヘモグロビン由来のピークにシフトしたことが確認されたことから、硫化水素結合性を有することが示された。さらに、メトヘモグロビン-アルブミンクラスター添加により硫化水素曝露したH9c2細胞の細胞生存率の上昇とミトコンドリア機能の維持が確認された。そこで、硫化水素投与15分以内に死亡する致死的硫化水素中毒モデルマウスにメトヘモグロビン-アルブミンクラスターを投与した結果、硫化水素投与24時間後まで全例が生存するとともに、臓器中シトクロムcオキシダーゼ活性を速く回復させた。 薬効解析学講座 7 薬効解析学講座 143
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