リアルワールドデータに基づくBERTを用いた新しい医薬品安全性シグナル検出手法の提案 している可能性が示唆された。そこで本研究では、企業ごとの数値に着目し、海外売上高と時価総額の伸長の相関を明らかにすることを目的とした。 【方法】東証プライムに上場し、業種が医薬品に区分されている製薬企業を対象に、2012 年度から2021年度までの時価総額と海外売上高の年平均成長率(以下CAGR)、及びそれらの相関係数を算出した。また、企業規模で層別化し、同様に相関係数を算出した。 【結果】対象の全32社において、時価総額CAGRと海外売上高CAGRの相関係数は0.50であった。企業規模で層別化した際、時価総額CAGR と海外売上高CAGR の相関係数は大企業で0.46 であったのに対し、中堅企業で0.53 であった。先行研究同様に、産業全体としての海外売上高の伸長が大きく見られ、大企業全体の海外売上高のCAGRは10.0%、中堅企業全体に於いては10.5%であった。その一方で、国内の売上高のCAGR に関しては大企業で-0.3%、中堅企業で3.5%と、10 年間で大きな伸⻑は見られなかった。大企業では、2012 年度の時点で売上高に占める海外売上高の割合が42%と高く、2021年度では64%まで増加した。中堅企業では、2012年度で11%、2021年度では18%と大企業と比較して低い数値となった。 【結論】国内製薬企業において、時価総額CAGRと海外売上高CAGRの間にはやや正の相関が見られた。企業規模で層別化を行っても結果に大きな違いは見られなかったが、企業規模によって、海外事業展開への積極性の違いがあることが示唆された。 Ⅱ.疫学・その他の研究 SGLT2阻害剤の重要な潜在的リスクに関する評価 【背景・目的】 SGLT2阻害薬(SGLT2i)は、糖尿病薬に共通する副作用に加え、グルコースを尿中へ排泄する特異な作用機序により注意が必要とされている。SGLT2iの重要な潜在的リスクは、肝障害、悪性腫瘍、骨折、心血管系疾患、膵炎、腎障害、下肢切断とされている。本研究では比較対照群を設定し、相対リスクの評価を行うことで、SGLT2iと重要な潜在的リスクの関連について明らかにした。 【方法】 DeSCヘルスケア株式会社が所有する大規模レセプト特定健診データベースを用いた、後ろ向きコホート研究を実施した。2型糖尿病(T2DM)治療の第一選択薬として最も多く使用されているDPP4阻害薬(DPP4i)を比較対照薬とした。調査対象は、SGLT2i、DPP4iのいずれかを初めて単独処方されたT2DM患者から、傾向スコアマッチングによりサンプリングした。主要評価として、肝障害、悪性腫瘍、骨折、心血管系疾患、膵炎、腎障害、下肢切断をイベント発生としたときの、DPP4i使用群に対するSGLT2i使用群のハザード比(HR)とその95%信頼区間(CI)を算出した。 【結果・考察】 全対象患者数は、SGLT2i使用群は3,748名、DPP4i使用群は11,668名であり、マッチング後はそれぞれ3,049名(平均年齢 65歳、男性割合 66%)であった。DPP4i使用群に対するSGLT2i使用群のHR(95%CI)は、肝障害 0.94 (0.71-1.25)、悪性腫瘍 1.15 (0.83-1.60)、骨折 0.73 (0.52-1.01)、心血管系疾患 1.01 (0.79-1.31)、膵炎 1.96 (0.83-4.63)、腎障害 0.70 (0.29-1.71)であった。下肢切断は、SGLT2i使用群では0件、DPP4i使用群では1件であり、HRは算出していない。以上より、SGLT2iの使用は重要な潜在的リスクの増加と関連していないことが示唆された。 【目的】診療報酬請求情報データベースに機械学習を適用し、 多元的な患者情報を考慮しつつ発現した医薬品の複数の有害事象の共起パターンに基づくシグナル検出が可能か検討することとした。 【方法】株式会社JMDC及びDeSCヘルスケア株式会社が保有するレセプトデータベースを用いた。 調査医薬品開発規制科学講座 5 医薬品開発規制科学講座 159
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