慶應義塾大学薬学部 教育・研究年報2022
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 診療報酬請求情報データベースを用いた、妊婦における抗精神病薬使用実態調査  診療報酬請求情報データベースを用いたガバペンチノイド・ベンゾジアゼピン系睡眠薬によるめまい及びユーザーテストでは、マニュアルに基づき要件定義通りであることを検証し、改善点をシステムおよびマニュアルに組み入れた。日本の医療情報DBを用いた既報論文の入力では、入力項目の充足率及び対象論文におけるコードの開示割合を算出した。ユーザーテストを経て、Pilot版ODRの構築完了とした。 【結果】要件定義に基づき、ユーザー情報、論文情報、コード定義情報、コードリスト(csv)、コードリスト(file)の計5個のデータテーブル、63個の変数から構成される不要な重複および空白データが存在しないリレーショナルDB(RDB)を設計し、テーブル定義書およびER図を作成した。Appsheetを用いてRDBを構築した後、入力の労力削減からcsvインポートによる自動一括入力および20個のUser Interface(UI)、運用側の負担軽減から11個のスキップロジック、2個の論理チェックおよびユーザー権限によるデータ保護、研究者の様々な要望および活用に対応可能となるようデータのエクスポート機能および単語および条件による検索機能を設定した。ユーザーテストは2回実施し、要件通り構築されたことをODR-TFメンバーで確認した。入力した2021年度の原著論文209報の内、コードの開示があった論文は142報(67.9%)であった。Pilot版ODRの3つのデータテーブル(論文情報、コード定義情報、コードリスト(csv))における全項目の入力が可能であった充足率は、それぞれ84.5%(120報/142報)、100%(850個/850個)、57.4%(7930個/13813個)であった。 【結語】本運用版ODRの構築にあたりGoogle社のAppsheetを用いてPilot版ODRを構築した。その後ユーザーテストを実施することで動作を検証し、改修を重ねることで構築完了とした。なお、本運用版ODRはPilot版ODRの構成および入力したデータを取り入れ、現在構築中である。医療情報DB研究にて設定したコードリストの積極的な開示が推奨される中、コードリストを蓄積するODRの活用が期待される。 浮腫に関する処方カスケードの検討 【目的】日本の高齢者におけるガバペンチノイド(GBP)・ベンゾジアゼピン系睡眠薬(BZ)による処方カスケード(PC)の発生を明らかにする。【方法】株式会社DeSCヘルスケアが保有する診療報酬請求情報データベースを用いた。調査対象は2014年4月~2021年5月に登録された65歳以上の患者のうち、GBP又はBZ開始前後90日間にめまい薬又はループ利尿薬(LD)を開始した患者とした。Prescription Sequence Symmetry Analysisを用い、調整後順序比(ASR)の95%CI下限値が1以上の時PC発生とした。【結果と考察】GBP前後のLD開始患者は2,671人(平均年齢82歳、女性57%)であった。ASRは1.69[95%CI 1.56-1.83]となり、PCの発生が示唆された。薬剤性浮腫の治療の第一選択は被疑薬の中止であり、安易なLD処方は避ける必要がある。GBP前後のめまい薬開始患者は4,009人(平均年齢78歳、女性63%)であり、ASRは0.89[95%CI 0.83-0.94]となった。BZ前後のLD開始患者は4,334人(平均年齢82歳、女性53%)であり、ASRは1.04[95%CI 0.98-1.11]となった。BZ前後のめまい薬開始患者は5,789人(平均年齢78歳、女性61%)であり、ASRは0.64[95%CI 0.61-0.68]となった。【結論】本研究により日本の高齢者におけるGBP誘発性浮腫に対してLDが処方されるPCの発生が示された。今後、GBP誘発性浮腫に対し、慎重な鑑別診断および被疑薬の中止・減量の検討が必要であろう。 【目的】妊婦における抗精神病薬の使用実態を明らかにする。【方法】DeSCヘルスケア株式会社が保有する診療報酬請求情報データベースを用いた。2014年4月~2021年8月に次の妊娠転帰(生産/流産・死産)を特定するアルゴリズムにより特定された妊娠を、調査対象とした;〔1〕妊娠転帰が生産:①児と同じ、家族または 親子を結びつけるユニークなIDをもつ女性、②妊娠に関するICD-10コードをもつ女性、〔2〕妊娠転帰医薬品開発規制科学講座 7 医薬品開発規制科学講座 161

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