慶應義塾大学薬学部 教育・研究年報2022
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 大規模診療報酬請求情報データベースを用いた、日本の小児患者におけるオピオイド製剤の適応外使  大規模診療報酬請求情報データベースを用いた、日本の小児患者における糖尿病用薬の適応外使用が流産・死産:流産・死産に関するICD-10コードをもつ女性。各妊婦の妊娠転帰日(出産日または流産・死産の発生日)及び妊娠開始日は、既報論文等を参考に推定した。観察期間は、妊娠開始日から妊娠転帰日までの妊娠期間及びその前後180日間とした。対象薬は抗精神病薬とし、妊娠期間(前期・中期・後期)及び妊娠前後における対象薬処方エピソード数・割合を算出した。【結果と考察】妊娠転帰が生産の妊娠は18,035件、妊娠転帰が流産・死産の妊娠は9,391件、のべ27,426件の妊娠が特定された(妊娠転帰時平均年齢:33歳)。抗精神病薬処方割合の推移は、妊娠初期(0.74%)から妊娠中期(0.47%)にかけて減少し、妊娠転帰日以降(0.97%)は増加した。妊娠初期から中期にかけての減少は、妊娠発覚を契機に、薬を中断した可能性が考えられる。また、初期ではアリピプラゾールが最も多く処方され、後期以降では中断される傾向がみられた。【結論】妊婦における抗精神病薬処方割合は、妊娠初期から中期にかけて減少し、妊娠転帰後には妊娠前と同等となった。今後、妊娠中に処方された抗精神病薬について更なる安全性の検討が必要である。 用実態調査 【目的】日本の小児患者におけるオピオイド(OP)製剤の適応外使用実態を明らかにする。【方法】株式会社JMDCが保有する大規模診療報酬請求情報データベースを用いた。対象薬は「がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン」2014年・2020年版に記載の薬剤とし、2005年~2021年に対象薬処方を受けた患者を調査対象とした。小児患者は処方時点で15歳未満の患者とし、小児適応外使用は小児未承認の対象薬使用・承認年齢範囲外・承認用量範囲外のいずれかを満たすものとした。小児患者に処方された対象薬の薬剤クラス別に適応外使用割合を算出し、年次推移を示した。【結果と考察】対象患者は1,593,642人、処方数は5,106,379件(年齢中央値49歳)であった。小児患者は119,088人、処方数は275,272件 であり(年齢中央値5歳)、うち適応外使用は27,612件(10%)であった。薬剤クラス別の小児適応外使用割合の年次推移については、強OPは1%前後、麻薬拮抗性鎮痛剤は8%前後で推移した。一方、弱OPの小児適応外使用割合は、2018年は0.7%であったが2019年は2.6%に急増し、その後2%で推移した。弱OPは2019年の添付文書改訂により12歳未満が使用禁忌となった以降も処方されたため適応外使用が増加したと考えられる。【結論】小児患者に対しOP製剤が適応外使用されていることが示された。疼痛管理・麻酔として適応外薬が使用されることや弱OPの禁忌指定以降の使用が原因と推察される。今後適応外使用解消のための開発が進み、OP製剤の適正使用が推進されることが望まれる。 実態調査 【目的】日本の小児患者における糖尿病用薬の適応外使用実態を明らかにする。【方法】株式会社JMDCが保有する診療報酬請求情報データベースを用いた。2005年1月~2020年10月に、日本で糖尿病を効能・効果として承認されている薬剤を処方された患者を調査対象とした。処方時年齢が15歳未満の患者に対する①承認年齢外、②承認用量外、③小児未承認の対象薬使用のいずれかを満たすものを小児適応外使用と定義し、小児患者に処方された対象薬のうちの適応外使用割合を年毎に算出した。解析にはSAS9.4を使用した。【結果と考察】調査対象患者は341,516名、処方は20,043,846件(処方時平均年齢55歳)だった。小児患者は3,662名、小児患者への処方は62,365件(処方時平均年齢9歳)であり、うち適応外使用は7,431件(11.9%)だった。小児適応外使用割合は、2005年の7.5%から2013年には30.5%に増加8 医薬品開発規制科学講座 162 医薬品開発規制科学講座

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