慶應義塾大学薬学部 教育・研究年報2022
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学部2年 分子創成化学講座 2021年度は新型コロナウイルス感染症対策として、学部の講義のほとんどは対面と遠隔を併用したハイフレックス形式で行っていたが、2022年度は一部の録画配信回を除き、講義のほとんどを従前通りの対面講義とした。 有機化学3 [春学期前半(1単位・必修)、担当 大江(ユニット責任者) 天然医薬資源学講座 植草] 本講義は主にモデル・コアカリキュラムC3(4)に相当し、基本的な有機化合物や生体分子の構造解析ができるようになるために、代表的な機器分析法の基本知識と構造解析の知識・技能を習得させることを目的とした。大江はマス(MS)スペクトル、赤外吸収(IR)スペクトルおよび旋光度分析、天然医薬資源学講座の植草助教はプロトン核磁気共鳴(1H NMR)スペクトル、13C NMRスペクトルおよびX線結晶構造解析を講義した。2021年度からの変更点としては、近年ライフサイエンス分野で使用される頻度が高い精密質量分析の内容を増やした。 生物有機化学-生体分子の化学構造- [春学期前半(1単位・必修)、担当 大江(ユニット責任者)] 本講義はモデル・コアカリキュラムC3(5)およびC4(1)に相当し、2年秋学期前半に行われる「生物有機化学 –生体分子の化学反応–」、2年秋学期後半に行われる「医薬品化学1」、3年春学期前半に行われる「医薬品化学2」につながる科目である。医薬品(有機化合物)の生理活性を有機化学的な側面から理解する上で、それが作用する生体側の化学的知識も必要となる。本講義は生体分子の構造と性質についての内容を中心に構成されている。 前半は、モデル・コアカリキュラムの無機化学関連をまとめた講義内容である。金属イオンの生理作用や、金属を含む酵素の構造と触媒活性の関係及び金属を含む医薬品の構造と作用機序を学ぶために、その基礎となる無機化学、錯体化学の基本的内容を最初に講義した。まず、代表的な無機酸化物の名称、構造、性質、代表的な錯体の名称や構造、さらに錯体化学の基礎となる原子価結合理論や結晶場理論を概説した。また、金属イオンと生体高分子の相互作用に関する理解を深めるために、HSAB理論についても説明した。その上で、生体内で機能する金属イオンや金属を含む酵素の構造と機能を学習することにより、生体における金属の重要性を理解させた。さらに、金属を含む医薬品や金属中毒の際に使われるキレート剤についても解説した。 後半は、秋学期以降に行われる生物有機化学や医薬品化学の各論の講義に向けた基本事項を修得することを主目的とした。医薬品と生体分子の相互作用、生体内で機能するリン、硫黄化合物、生体高分子を構成するアミノ酸や糖などの内容が含まれる。これらは生化学など他分野の知識も必要であり、それらと関連付けながら講義を行った。教科書を中心に、適宜プリントとスライドで補足した。 分子創成化学講座 1 分子創成化学講座 181教 授:熊谷 直哉 准 教 授:大江 知之 助 教:堤 亮祐 担当授業概要

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