慶應義塾大学薬学部 教育・研究年報2022
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Ⅰ.教育について (6)生活者にとって分かりやすい要指導・一般用医薬品添付文書の構成に関する研究 要指導・一般用医薬品の適正使用のためには、使用者に対する分かりやすい情報提供が重要である。本研究では、患者へのアンケート調査により現行の添付文書の課題抽出を行い、「要指導医薬品の添付文書理解度調査ガイダンス」を基に、一般用医薬品添付文書の理解度調査を実施し、生活者が理解し易い添付文書のあり方を検討する。 (7)副作用の説明の有無とノセボ効果との関連に関する研究 ノセボ効果とは、薬物治療において心理的に引き起こされる有害な事象である。本研究では、健康成人ボランティアを対象として、カフェインの副作用に関する説明の有無によりノセボ効果に違いが現れるかを検討した。 自己点検・評価 「実務実習事前学習4」を科目責任者として担当した。本年度は薬学部の方針に従い、全ての回を対面とオンライン配信とを併用したハイブリッド方式とした。本科目では主要な疾患について症例を提示し、薬剤師としてどのような視点でアプローチすべきか、演習を交えながら指導した。またチーム医療については慶應義塾大学病院で実際にチーム医療を行っている薬剤師・看護師を招き、最新の知見を盛り込んだ講義をしていただいた。「実務実習事前学習2」、「実務実習事前学習3」でも、薬歴・診療記録の記載に関する基本的事項や、医療安全への関わり等の先端的な薬剤師業務について、病院業務を兼務していることを生かした臨場感のある講義を実施した。また、「実務実習事前学習(実習)」ではシミュレーターを使用したファジカルアセスメント実習を行った。 慶應義塾大学病院で受け入れた「早期体験学習(薬学科)」、「病院実務実習」、「アドバンスト実習」でも薬剤部員と連携して指導を行い、学生に医療現場で求められる知識、技能、態度について直接、指導することができた。 大学院教育については、がんプロフェッショナル養成基盤推進プランで実施した症例検討会の企画・運営に関わった。 次年度も上記の取り組みを継続する。 Ⅱ. 研究について 臨床で起きている問題の解決を目的としたテーマで、講座としての研究活動を行った。 研究概要(1)については、医師記録を想定して作成された既存の自然言語処理システムの、薬剤師記録への適用可能性と薬剤師記録を少量学習させた場合の性能の変化を調査した。既存のシステムを薬剤師記録に適用した場合の性能が不十分であること、少量でも薬剤師記録を学習させることでシステムの性能が向上することが明らかとなった。次年度は、データ量を増やした学習と他施設の薬剤師記録を用いた学習を実施する。研究概要(2)は、初めに鎮静性・非鎮静性抗ヒ薬による鎮静作用の比較を目的としてメタ解析を行った。非鎮静性抗ヒ薬で眠気の発生リスクが低く、眠気の頻度は脳内ヒスタミンH1受容体占有率に相関する可能性があった。この成果は日本薬学会第143年会にて発表した。また多施設共同観察研究を行い、非鎮静性抗ヒ薬のIR予防効果と鎮静作用について検討した。次年度は質問票を用いた多施設共同追跡研究を実施する。研究概要(3)については、オンライン服薬指導の現状と課題の把握を目的として、オンライン服薬指導を経験した薬剤師を対象にアンケート調査病院薬学講座 3 病院薬学講座 205

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