慶應義塾大学薬学部 教育・研究年報2022
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の共同研究については、2021年度コロナ禍のため一部制限も発生したが、多くのテーマでは引き続き研究を積極的に展開した。学内では、医学部血液内科学教室とスペシャル・ポピュレーションにおけるがん化学療法の至適投与設計に関する研究、CML患者における4剤のチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)の最適治療に関する研究を連携して行った。また血液内科学教室及び眼科学教室との共同研究では、骨髄移植後GVHD治療を目指した和漢薬の分子薬理学的研究及びGVHDマウスモデルを用いた検討も行った。学内外の医療施設とも連携し、薬剤疫学および医療統計学的手法により、慶應義塾大学病院および国立がん研究センター中央病院と、がん化学療法に伴う副作用の回避あるいは軽減を目的とした後方視的観察研究を行った。肺がん患者におけるオシメルチニブを始めとする各種EGFR-TKIおよびALK-TKIの同時分析法および最適投与法の確立に関する研究も継続中である。国立成育医療研究センターとの共同研究を開始し、小児患者に対する抗菌薬および免疫抑制薬の適正使用に向けて、PK/PD研究を継続中である。 がん治療以外の領域でも多施設と共同研究を行っており、臨床現場における簡易的な薬物血中濃度測定に基づく至適個別化療法を目的とした、遊離形CMZ濃度を用いたPK/PDに基づく最適投与法に関する研究や、医学部膠原病内科および薬剤部との共同研究で経口ステロイド薬の適正使用に関する研究、医学部漢方医学センターとの共同研究で更年期障害に対する漢方療法の効果に関する研究も継続中である。予防医学の観点からの研究も開始しており、医学部衛生学公衆衛生学教室との共同研究で、高齢者における三大生活習慣病と服薬アドヒアランスに関する研究を実施した。 今後もさらに慶應義塾大学薬学部の医療系ならびに基礎系研究室、慶應義塾大学医学部および学外医療機関との連携を構築し、より精密で質の高い薬学研究に発展させ、これらの研究をさらに進め、臨床への貢献を目指していく。 (2)和和漢漢薬薬等等天天然然薬薬物物のの適適正正使使用用のの推推進進とと薬薬効効薬薬理理メメカカニニズズムムのの解解析析 漢方薬の「証」を規定する因子を薬理遺伝学的に解析し、東洋医学理論との整合性について詳細に検証している。慶應義塾大学医学部漢方医学センターとの共同で、「西洋医薬品と和漢薬との併用による適正使用の確立」を目的とした研究を進行中である。本研究については、和漢薬を扱う医療施設との共同研究ネットワークを確立し、今日的な和漢薬の新たな使用方法のあり方、すなわち、非常に強力な薬効を有する西洋薬による体調の変動(≒「証」の変動)や副作用を漢方薬等和漢薬で改善するメカニズムの検証と、東西医薬品併用の適応データベースの構築を目標として研究を進めた。具体的には、肥満症に対する漢方薬の適正使用に向けた薬効薬理学的研究に着手した。また、慶應義塾大学医学部血液内科および眼科学教室との共同研究により抗炎症作用を有する桔梗湯の新たな臨床応用を目指した動物実験も実施しており今後につながる新規知見を見出した。さらに近年注目されているモバイルヘルス(mHealth)に着目し、患者主訴を収集し治療に貢献できるアプリケーション開発にも着手した。 (3)医医療療薬薬学学にに関関連連ししたた薬薬学学教教育育のの洗洗練練化化 社会に貢献する医療人の育成を目指し、とくに近年、医療人のプロフェッショナリズム欠如が問題となっている現状、そして令和6年度入学生からの次期改訂コアカリへの導入も視野に入れ、2018年度から開始している薬学実務実習生の医療プロフェッショナリズムについての研究にさらに精力的に取り組んだ。プロフェッショナリズム評価の妥当性と検証に加え、これまでに見出した実務実習生の問題点に基づき、2022年度は教育効果改善に向けた介入研究を展開し、一定の成果が得られた。また、事前学習や実務実習に関わる臨床6 医療薬学・社会連携センター 医療薬学部門 236 医療薬学・社会連携センター 医療薬学部門

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