慶應義塾大学薬学部 教育・研究年報2022
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研究概要 知的障がい者との交流から学ぶ [通年(0.5単位・自由)] (山浦・科目責任者、小林、岩田、中村・分担) 知的障がいを持つ人を対象とした港区主催の活動「いちょう学級」に参加し、実際に知的障がいを持つ人たちと共同作業を行い、会話を交わすことで、理解力、表現力、感受性の多様性、人と人とが互いに尊厳を持ち接する事の重要性、幼少より継続した薬の服用が必要な者の気持ちの理解といった医療人の基盤となるヒューマニティーを活動体験を通じて学ばせた。 た。 地域住民の健康サポート体験学習 [通年(0.5単位・自由)] (山浦・科目責任者、小林、岩田、中村・分担) 薬局でのヘルスマネージメント、国民の健康状態に対する意識向上に役立つ、体力・運動能力測定について実践を交えて学ぶことを目的とした。学生は「健康づくり教室」に参加する港区在勤、在住の高齢者を中心とする人々の体力測定(握力、閉眼片脚立ち、垂直跳び、長座体前屈)や体重・体脂肪、骨量等の測定を行った。また、参加者と一緒にストレッチ、卓球、ピラティス、エアロビクスなどを行い、様々な年代の人々とコミュニケーションをとることで健康に対する社会のニーズについて体験的に学べるようなプログラムにした。 コロナ禍での高齢者中心のプログラムのため、感染対策に留意しながら実施した。 社会薬学は、その学問・研究を通じ、薬学がどのように社会に応えていくかを明確にしていく役割を有している。社会薬学部門では、地域医療に係わる薬剤師業務にフォーカスをあて、社会の動向を把握しながら、我が国の薬剤師が職能を発揮することで、如何に国民の健康維持・増進に貢献できるのか、そのエビデンスの構築を目的に、薬剤師業務がもたらす効果を定量化し、有用性をわかりやすい形で広く社会に向けて情報発信することを目指し、研究活動を行っている。 また、社会薬学部門主任は附属薬局長を兼任し、教員も附属薬局の保険薬剤師として兼務しており、大学内の研究室からは感じ取ることができない、現実社会、地域住民が薬剤師に求める役割を敏感にとらえ、大学研究者と薬剤師の両方の視点から、両者の資源を融合させた独自の研究を展開している。以下に2022年度に行った主な研究成果について記す。 1.口腔乾燥を誘発しうる薬剤の高齢患者に対する処方実態と要因 高齢患者においては、加齢による唾液分泌機能低下や服用する薬剤等の影響により、口腔内の乾燥が問題として挙げられるが、口腔乾燥を誘発しうる薬剤(口腔乾燥誘発薬)の処方実態に関する報告は少ない。社会薬学部門では、高齢患者に対する口腔乾燥誘発薬の処方実態を明らかにすることを目的に、慶應義塾大学病院総合診療科の電子カルテデータを使用し、65歳以上の患者のうち、1年以上継続して薬物治療で外来受診している患者を対象に、年齢、性別、処方薬剤、罹患疾患を調査した。575人のうち、464人(80.1%)が口腔乾燥誘発薬を服用していた。口腔乾燥誘発薬同士の重複処方は、後期 4 医療薬学・社会連携センター 社会薬学部門 246 医療薬学・社会連携センター 社会薬学部門学部1・2・3・4・5・6年 2022年度はいちょう学級が通常期間(5月~3月)にて開催され、感染対策に留意した上で実施し

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