慶應義塾大学薬学部 教育・研究年報2022
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高齢者であること及びポリファーマシーであることと有意に関連していた。本研究により、高齢患者において口腔乾燥誘発薬は高頻度で使用され、後期高齢者では重複処方も増加することが明らかとなり、薬剤に起因する口腔乾燥症状にも配慮した薬学的管理が必要であると示唆された。 本研究内容については、日本薬学会第143年会(2023年3月)において報告し、学生優秀発表賞(ポスター発表の部)を受賞した。 2.過疎地域に所在する薬局の薬剤師業務と地域における役割 現在、日本の市町村の51.5%が過疎地域に指定されており、医療アクセスの問題とともに薬局薬剤師の地域偏在も課題となっている。社会薬学部門では、過疎地域の薬局・薬剤師の業務と地域活動を調査し、ICT活用が過疎地域の医療にもたらす可能性と課題を明らかにすることを目的に、全部過疎に指定されている市町村に所在する全国4029薬局を対象に無記名自記式質問紙調査を行った(有効回答率24.3%)。81.1%の薬剤師が地域住民の移動手段に問題があると回答し、30.6%の薬局が薬の配達・郵送を実施していた。一方で、高齢者の端末使用への不安や通信環境の不十分さのために、患者対応へのICT活用に課題を感じている薬剤師も多かった。本研究により、過疎地域においてICTを活用していく上では、国・自治体による使いやすい端末・システムの導入や通信環境の整備等の課題解消に加え、地域の現状を考慮した柔軟な対応が必要だと考えられた。 本研究内容については、日本薬学会第143年会(2023年3月)において報告し、学生優秀発表賞(ポスター発表の部)を受賞した。 3.実務実習を修了した上級生が関わるセルフメディケーション実習の学修効果 慶應義塾大学薬学部における4年次の実務実習事前学習のセルフメディケーション実習では、実務実習を修了した6年生がStudent Assistant (SA)として症例の検討や準備、ロールプレイの来局者役として関与している。社会薬学部門では、4年生と6年生の双方の学修効果を明らかにすることを目的に、本実習に参加した4年生143名およびSAの6年生9名を対象にアンケート調査を実施した。4年生の82%が実習で使用した症例が実践的であると回答し、99%以上が同級生より6年生とロールプレイをする方が実践的であったと回答した。一方、6年生自身も実務実習を振り返って知識の理解を深めると共に、4年生の時より成長していることを実感していた。本研究により、6年生が実習に関与することで、4年生に実践的な来局者対応のロールプレイを提供し、実務実習に向けてイメージの形成に寄与するだけでなく、6年生にとっても様々な学修効果があることが示唆された。 本研究内容については、日本薬学会第143年会(2023年3月)において報告した。今後、論文投稿を行う。 4.ワクチン接種に関する薬局薬剤師の来局者対応の実態及び接種行為に対する認識 日本人のワクチン信頼度は世界的にも低いが、薬局薬剤師によるワクチン接種に関する対応実態は不明である。社会薬学部門では、ワクチン接種に関する相談応需・啓発の対応実態および薬剤師によるワクチン接種行為に対する考えを明らかにすることを目的に、全国の1,000軒の保険薬局を対象に無記名自記式質問紙調査を実施した(有効回答446件)。ワクチン接種の相談応需経験がある薬剤師は86.5%であった一方、啓発経験がある薬剤師は59.2%にとどまり、日本人のワクチン信頼度の低さの認識度が関連していた。相談応需や啓発の推進には「薬剤師向けの研修」(76.9%)が必要との意見が多医療薬学・社会連携センター 社会薬学部門 5 医療薬学・社会連携センター 社会薬学部門 247

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