1,3-DimethoxybenzeneをI2-H2O2の条件で2ヨウ化物とし、銅触媒存在下メトキシル化によりアレルギー炎症抑制作用を持つ1,2,4,5-tetramethoxybenzeneを合成した。同様の手法は、ノビレチンの合成前駆体であるpentamethoxybenzeneの合成にも有用で、1,2,3-trimethoxybenzeneから出発しメトキシル化の前駆体となる2ヨウ化物(2)の調製には、折戸らのHgO-I2が最も有効であった。対応する臭化物および構造の異なるヨウ化物の調製、メトキシル化も比較した。 1,2,3,5-Tetramethoxybeneneの合成に求められる5位ハロゲン化物は、1,2,3-trimethoxybenzeneの直接ハロゲン化では合成できない。そこで、1,2,3-trimethoxybenzeneから2,6-dimethoxyphenolを経て調製可能なアルデヒドをDakin酸化して3,4,5-trimethoxyphenolとし、メチル化で1,2,3,5-tetramethoxybeneneを合成した(Scheme 3)。メチル化は還元剤共存下、相間移動触媒条件で効率よく進行した。 学部6年(6年制、薬学科) 薬学英語演習E [5~6年 春・秋学期(2単位・必修)] 英語を頭で理解するだけでなく、英語を発音し、内容を正しい日本語としてまとめ、他人に説明できるようになることを目的とした。基本的な実験科学英語を理解しながら読み、さらに卒業論文の内容に合わせてまとめ、発表した。 卒業研究A [5~6年 春・秋学期(23単位・必修)] 「生物活性物質創製の基盤となる有機合成化学」について、配属の1名ごとに一テーマを設定した。卒業研究期間中には、自分のテーマについて深く理解すること、他人のテーマとの関連性などを考えるため、毎月実験報告を行った。 大学院 有機薬化学演習 [4単位] 有機合成化学、生物有機化学などに関連した最新の学術雑誌を読んでまとめ、その内容について討論した。単に論文に書いてある内容を紹介するのみならず、実験方法から結果の解釈、さらに考察に至る論旨などの問題点を指摘した。 研究概要 医薬品、生物活性物質合成前駆体の位置・立体選択的合成 芳香環を有する生物活性物質の代表例としてフラボノイドやプレニルフェノール類が挙げられ、その合成前駆体調製には、容易かつ大量に得られる原料から出発し、正しい位置でフェノール・メチルエーテルを導入する手法が求められる。それには中間化合物の反応性や安定性にとって大切な「酸化段階や芳香環の電子密度」の設計と制御、それを実現する保護基の導入や反応条件が重要である。芳香環のハロゲン化や酸化、および酵素触媒による位置選択的・温和な条件下変換反応を検討した。 最後に二量体構造に興味を持ち、2,6-dimethoxyphenolの酸化的二量化で得られるジキノン)を還元、メチル化して対称構造を持つ3,3’,4,4’,5,5’-hexamethoxybiphenylを収率よく合成した。ホモカップリングによる従来法は、前駆体調製の工程数が多く、この方法が有利である。一方、ジキノンの還元的アセチル化で得たジアセタートに対しCandida antarctica lipase Bを用いた酵素脱アセチル化を試みると、非対称構造を持つ4’-hydroxy-3,3’,5,5’-tetramethoxybiphen-4-yl acetateが得られた。 4 有機薬化学講座 28 有機薬化学講座
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