慶應義塾大学薬学部 教育・研究年報2022
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Ⅰ.教育について Ⅱ.研究について を阻害する候補化合物群の探索を目的に、その生物学的活性評価、候補化合物と標的タンパク質との相互作用解析を行うためのタンパク質試料の大量調製、候補化合物との相互作用の物理化学的解析、構造生物学的解析(核磁気共鳴分析(NMR)、X線結晶構造解析)を実施する。この過程で得られた知見や成果をもとにPPI阻害作用の活性値に対するAI予測モデルの高精度化を図り、将来的なインシリコ創薬技術による高活性化合物の探索・創製技術の確立へとつなげる。 2022年度は、SPのレセプター結合ドメイン(RBD)とhACE2のそれぞれのNMRによる化合物との相互作用解析を進め、インシリコアプローチによりヒット化合物の構造活性相関解析を実施した。さらに、研究の成果がAMEDに認められ秋に調整費を配賦していただき、高感度クライオプローブの導入、大環状化合物ライブラリーの拡充を達成した。これにより、今後の研究効率およびライブラリーの多様性が格段に向上した。クライオプローブについては機器管理委員会に寄贈し、学部で共用しており、本学部の化学研究に貢献した。 自己点検・評価 2021年度前半までは、動画によるオンデマンド授業を行っていたが、2022年度前半の講義は、ほとんどを対面講義に戻して実施した。一方で、量子化学分野など、オンデマンドでの動画配信により理解しづらい部分を繰り返し視聴できることが対面講義よりも大きな教育効果を上げることが2021年度までの経験で分かったため、一部の講義はオンデマンド講義を維持した。この対応は学生からも好評であった。一方で、動画を積極的に視聴しない学生への教育効果は当然ながら上がらないという点に関しては、以前より問題意識を持っているが、まだ具体的な対応に至っていない。定期試験でも満点に近い学生数が増えた一方、不合格者数は20名程度と、例年とあまり変わらないものの少なくない人数が出ている。特に、不合格者のほとんどが高校で物理を履修していない学生である。リメディアル教育を行う科目である「基礎物理学」との連携を深めるなど、改善を行っていく。毎回の講義についてK-LMSでアンケートを実施した結果、学生からの意見を知る機会ができ、次の回の講義で補足説明ができた点など、メリットがあった。 薬学基礎実習においては、1年生は週に1回しか芝共立キャンパスに来ないため、2020,2021年同様に午前・午後の分割実習を実施することにより実習室の人口密度を下げるなど、感染予防対策をしながら安全に実習を実施することができた。 講座における教育については、2021年度同様、各学生の研究の進捗を毎日確認し、研究計画の提出を求め、講座における実験や対面での指導に重点をおいて研究指導を進めた。教員と学生との対面でのコミュニケーションが増えた結果、各学生の研究能力が昨年度以上に向上したことが認められた。 2022年度の当講座の構成員は教員3名、薬学科博士課程1名、薬科学科修士課程2名、薬学科6年生1名、5年生2名、薬科学科4年生1名、薬科学科3年生2名の計15名であった。各自の研究テーマで必要な試料の調製を通じ、遺伝子操作、タンパク質の発現・精製、分析法などの基本的な実験操作を習得し、研究を推進した。 4 生命機能物理学講座 54 生命機能物理学講座

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