Ⅰ.教育について Ⅱ.研究について 自己点検・評価 ニズム解明および新規治療法の探索を目標とし、ALSの病態形成における免疫疲弊の影響を解析している。 これまでの解析により、ALSモデルマウス(SOD1G93Aマウス)の脊髄では病態進行に伴い複数の免疫疲弊分子の発現上昇がみられること、また免疫組織染色法によりLAG-3がミクログリアに発現していることを見出している。しかしミクログリアにおけるLAG-3の発現機構に関しては未だ不明である。そこでマウスミクログリア細胞株 (BV2細胞) を用い、ミクログリアにおけるLAG-3の発現因子を解析した。ミクログリアは神経炎症型 (M1型) および神経保護型 (M2型) の2種類の活性化状態が知られているため、BV2細胞をM1型およびM2型へ誘導する実験系を確立し、それぞれの活性化状態におけるLAG-3の発現を解析した。結果として、M1型誘導因子であるIFN-γの処置により、BV2細胞において膜型および可溶型LAG-3の発現上昇がみられた。また膜型LAG-3の発現にはSTAT1を介したシグナル経路が、可溶型LAG-3の産生にはADAM10/ADAM17を含むメタロプロテアーゼによる膜型LAG-3の切断が関与していた。今回我々が着目したLAG-3はT細胞において解析が進んでいる分子であり、ミクログリアにおけるLAG-3の機能は未だ不明である。今後はその機能について検討し、ALS病態との関連を明らかとしていく。 コロナ禍により続いていたハイフレックス方式(対面および遠隔の同時配信;さらにオンデマンド配信)での教育から、2022年度にはほぼ正常の対面講義へと戻ることができた。多くの学生がオンデマンド配信を利用した2021年度とは異なり、本年度の学生は、講義への参加態度に真剣さが感じられ、実際に定期試験での成績も良好であった。教員としては、ライブ授業の緊張感と熱量を学生に伝える重要性を再確認した。講義は単に知識を伝えるだけではない一期一会のイベントであることを意識しつつ、DXを有効に取り入れるなど、今後の講義スタイルを考えていきたい。 また、薬理学実習では、動物実験の3Rの原則を堅持しつつも、学生に丸ごとの動物(マウス)を用いて薬の作用を解析する貴重な機会を提供している。このためコロナ禍においても、オンサイトでの実施にこだわり、感染対策に十分に留意した上で、項目を厳選して実施した。一部の項目においては実習シミュレーターを取り入れることで、使用動物数の削減が可能となった。学生からは高い評価が得られた。 コロナ禍によるラボ活動への影響も徐々に正常化し、ラボセミナーも対面に戻ったため、実験結果や実験手技の細部にわたる対面での確認が可能となり、実験進捗が加速した。 薬理学講座は、研究活動を講座運営上の最重要課題と位置づけ、意欲の高い学生とともに、学問的重要課題に真正面から向き合い、果敢に突破するブレークスルーを目指している。講座配属のパンフレットには、「ここでは何をしてもらえるのか」ではなく「ここでは何をさせてもらえるのか」と考えることのできる積極性のある学生の参加を求める、と記載している。各学生に対する指導は、厳しい中にも和やかな態度で、学生の意思を十分に尊重する様に意を配っている。最近の学生の特徴として、与えられた課題に対しては積極的に取り組み有能であるが、未知の課題に対して柔軟性をもち忍耐強く取4 薬理学講座 62 薬理学講座
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