慶應義塾大学薬学部 教育・研究年報2022
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らかにすることで、疾患の発症や増悪との因果関係に迫れると考えられる。2022年度においては、ノンターゲットリピドミクスに適用可能な細胞膜、ミトコンドリア、リソソームの培養細胞からの単離系を構築することに成功した。特に単離ミトコンドリア、リソソームのノンターゲットリピドミクスについては従来の生化学的手法に比べて10分の1程度の細胞から高純度なオルガネラの単離に成功し、既知のオルガネラ特有脂質の他に、各オルガネラに濃縮されている脂質分子種の存在が明らかとなった。また、ミトコンドリア単離技術をin vitro筋細胞分化モデルと組み合わせ、筋細胞の分化に伴うミトコンドリア脂質組成変化を観測し、分化に従って特徴的に増加する脂質分子種の存在を明らかにした。この脂質分子種が分化や分化に伴うオルガネラおよび細胞機能の変化に関与するか検討を進めている。今後は単離オルガネラのノンターゲットリピドミクス結果の詳細な解析をさらに進め、新規構造の脂質分子種の同定を目指す。また、各オルガネラの脂質シグナチュアの生理的意義を多様な細胞・動物モデルを用いて解明していく予定である。 代謝生理化学講座 7 代謝生理化学講座 71

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