慶應義塾大学薬学部 教育・研究年報2022
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Ⅰ.教育について Ⅱ.研究について 自己点検・評価 代謝生理化学講座では,薬学科および薬科学科の1年次必修科目として,「細胞の機能と構成分子」,「実験法概論」,「薬学基礎実習(生物系)」,「薬学への招待」,2年次必修科目として,「機能生理学」,「生化学2」,「代謝生理学」,3年次科目として「バイオ医薬品とゲノム情報」,を担当した。「薬学への招待」では幅広い薬学の領域を理解するとともに、基礎研究の魅力や重要性が伝わるような講義を行い、受講生からは多くの前向きなフィードバックを得ることができた。「細胞の機能と構成分子」では,生命活動の基本単位である細胞とその構成分子について概説し,2年次以降の生物科目を理解するためのベースを身につけさせることができた。「機能生理学」,「生化学2」,「代謝生化学」では,ヒトの健康がどのような分子基盤の上で成り立っているかを概説し,疾患発症のメカニズムやその治療戦略の基本について理解させることができた。「バイオ医薬品とゲノム情報」では遺伝子組換え技術の基礎についての講義を担当した。また,講義において医薬品の作用メカニズムなどを盛り込み,疾患を分子レベルで理解することの重要性を伝えられるよう工夫した。さらに「実験法概論」では,生物実験を行うに先立ち,守るべきルールや態度,基本技術を理解させるだけでなく,ルールが設定されている背景や理由,適切な態度で実験に臨むべき理由を,実際の事例をもとに説明することで,理解を深めるよう心がけた。「薬学基礎実習」では,適切な手技を身につけさせることに加え,「実験法概論」で理解したことを実践させるよう指導した。また,「実験法概論」と「薬学基礎実習」の内容をリンクさせた話題を盛り込んだことにより,生物系実験の留意事項をよりリアルに認識させることができた。 講座に配属された学生については,自ら深く考えて行動する研究マインドの育成を心がけた教育・研究活動を行った。論理的な思考力や洞察力を養うために,日々のディスカッションを通して,実験結果に対して深く考察させるよう心がけた。また,セミナーやジャーナルクラブを毎週開催し,プレゼンテーション能力や理解力の向上を促した。さらに,シンポジウムや講演会への参加を促して最新の研究に触れさせることで,生物系薬学に対する幅広い興味や知見を得られるよう心がけた。 当講座では,生命の脂質多様性を網羅的に捉えるために最先端のリピドミクス解析システムを独自に開発し、生体内で脂質多様性やその局在を創り出し、調節・認識するしくみの解明、およびその破綻による疾患解明を目指している。脂質代謝異常が多くの疾患の背景因子であり、また脂質分子の中には生理活性分子が多く含まれていることから、新たな創薬シーズの発見や、早期診断・治療などの医学応用につながる可能性がある。得られた研究成果について様々な学会・シンポジウムで発表し,2名の学生が優秀発表者賞を受賞した。また,創薬研究センター内に立ち上げた創薬メタボロームプロジェクト (iMeC)においては,最先端の質量分析技術を揃えた創薬イノベーション研究環境を整え、大学での基礎研究の実用化に向けたトランスレーショナルリサーチを展開している。さらに2021年度より、JST戦略的創造研究推進事業ERATO「有田リピドームアトラスプロジェクト」が発足し、薬学部内にヘッドクオーターおよびプロジェクト研究室が新たに設置された。本ERATO研究では、生体内の脂質多様性や局在を制御するメカニズムについて、質量分析イメージング、機能性ゲノミクス、プロテオミクス、ケミカルバイオロジーなどの最先端技術を駆使した時空間解析により、新しいコンセプトのサイエンスや創薬標的の導出を目指している。さらに、2022年度より慶應義塾大学ヒト生物学-微生物叢-8 代謝生理化学講座 72 代謝生理化学講座

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