過剰なERストレス反応からアポトーシスを誘導することも明らかとなり、オートファジー創薬が展開している。 Ⅱ.がん特異的抗原を用いた免疫治療法の開発 前立腺がん幹細胞に発現する新規がん抗原に対する抗原特異的T細胞受容体遺伝子導入T細胞の樹立及び診断用モノクローナル抗体の作製 我々はこれまでにがん幹細胞抗原であるKU-MEL9においてHLA-A*24:02拘束性のエピトープペプチドを同定し、このエピトープに対する細胞傷害性T細胞(CTL)のT細胞受容体(TCR)のクローニングに成功している。本年度は本TCR遺伝子を内因性TCR遺伝子発現を抑制するsiRNA配列を有するレトロウイルスベクターを用いてヒトT細胞に遺伝子導入し、がん細胞に対する抗原特異性を確認した。また、以前より、前立腺がん患者において当抗原を用いたがん免疫療法の適応を診断するために、免疫染色に用いるモノクローナル抗体の作製を進めている。MBPタグ付きKU-MEL-9タンパクを抗原としてマウスに免疫し、マウス由来脾臓細胞とミエローマ細胞を融合してハイブリドーマを作製およびクローニングを行い、。最終的に、去勢抵抗性前立腺がんを初めとする難治がんに対する新規治療法の確立を目指す。 多発性骨髄腫細胞における免疫学的細胞死の検討 我々は、ハイリスク骨髄腫細胞株に対してプロテアソーム阻害薬が通常の細胞死を誘導するだけでなく、その結果、細胞表面にカルレティキュリン分子を発現させ、HMGB1などのDAMPsを放出することで腫瘍微小環境において樹状細胞を活性化するという免疫学的細胞死(ICD)を誘導することを明らかにしてきた。さらに、Dracocephalum komarovii由来化合物のスクリーニングにより、強力なICD誘導作用を持つ化合物としてGTN057を見出した。今年度は、in vivoの系にて本化合物の免疫賦活効果を検討した。すなわち、マウス骨髄腫細胞MOPC細胞を播種したimmunocompetent mouseに対して本化合物を投与し、腫瘍微小環境における免疫細胞の挙動を検討したところ、リンパ球数の増加が観察されたため、今後より詳細な検討を行っていく。さらに、本化合物が骨髄腫細胞にもたらす遺伝子変化についてRNAシークエンス解析を試行し検討中である。また、天然医薬資源学講座との共同研究により、他にもICD誘導作用を有する化合物を複数見出しており、これらについても免疫賦活化作用にかかわるシグナル応答について検討を進めている。 6 病態生理学講座 84 病態生理学講座
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