慶應義塾大学薬学部 教育・研究年報2022
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自己点検・評価 Ⅰ.教育について Ⅱ.研究について 本年度の薬科学前期博士(修士)課程学生4名に学部学生を合わせて22名が講座に所属し教員が協力し研究指導を行った。日々の研究指導に加えて、週1回のワークカンファレンスでは、科学的議論を積み重ね、学生からも積極的な質問や発言ができるようになった。さらに、週1回のwebジャーナルクラブでは、学生には各自が興味を持った一流の英語論文を選ばせ、それをまとめて決められた時間内に発表させた。学生たちは、学年末にはかなり細部まで質の高い論文を読みこなせるようになった。これ以外にも随時研究グループごとのミーテイングを積極的に行い、論文完成を目指して細部にわたる科学的議論を行った。ワークカンファレンスおよびジャーナルクラブにおける学生の評価を客観的かつ適切に行うために、出席はもちろんのことプレゼンテーションの内容、質疑応答への参加を毎回数値化し教員全員で評価を行った。 「薬物治療学2,4」では、薬物治療総論、循環器疾患、血液疾患、呼吸器や乳癌を含む胸部疾患、自己免疫疾患、脂質異常症などについて、学生達が各疾患の病態を理解し、理にかなった薬物治療が遂行できるようにきめ細かい講義を行った。また、薬物治療1は、新コアカリキュラムのフィジカルアセスメントに対応できる内容である。これをふまえて、実務実習事前学習の中の症例検討では、PBL形式の症例検討を行って実践力を養成した。 改善計画 医療の分野では年々加速度的に医療技術の進歩や新規医薬品の開発が著しい。COVID19も含めて新たな情報を組み込みながら、毎年改定される最新のガイドラインに沿った講義を行い、症例検討もふんだんに盛り込んだ実践的教育を行って行きたい。来年度から始まるコアカリ改訂に向けて、薬物治療学をはじめとする講義科目が、薬理学等の基礎科目から実務実習事前学習や実務実習に効率良くつながってゆく教育体制を構築してゆきたい。 我々の講座は2008年に、新しく開設された講座である。スタッフ各自はそれぞれ異なった研究背景を有するが、3名ともHematologic Oncology、Immunologyを共通の専門分野としており、それぞれの得意な実験手法を融合させて、造血器腫瘍の分子病態解明と克服法の開発といった一定の方向性をもった研究活動が展開できた。これらの成果は、文部科学省基盤研究、戦略的私学助成、私的研究資金の獲得や特許申請につながった。重要なこととして、学内他講座のほか塾理工学部・医学部、国立がん研究センター、東京都済生会中央病院、高崎健康福祉大学とも積極的に共同研究を展開し、特許申請も行っている。 改善計画 昨年度は、COVID-19禍により学生の学会発表に制限がかかったが、学生の安全を確保したうえで、積極的に発表機会を作ることができた。来年度も、蓄積されたデータのさらなる発表機会を作ってゆきたい。医薬学研究、生物学的研究の進歩は著しく、バイオインフォーマテイックスも積極的に日々の研究に取り込んで行きたい。来年度以降も、積極的なコラボレーションを展開し、新しい研究手技を積極的に取り入れながら、臨床に応用しうる基礎研究(トランスレーショナルリサーチ)あるいは臨床で生じた疑問を解明する基礎研究(リバーストランスレーショナルリサーチ)を推進してゆく必要がある。 病態生理学講座 7 病態生理学講座 85

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