慶應義塾大学薬学部 教育・研究年報2022
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改善計画 研究業績 Ⅱ.研究について おける薬剤師の果たす役割は大きい。講義では、薬を開発することと薬を適正に使用することの両面から、感染症と悪性腫瘍に対する化学療法を正しく理解することを目指している。 微生物学実習1.5単位(2年)は、従来の微生物学実験法の実習に、近年の病院薬剤師に特に重要な感染制御の考えを大幅に取り入れたものである。2022年度は、従来通り、実習室で、10日間の実習を行なった。 2020年以降、新型コロナウイルス感染症の流行のため、講義、実習が制限されてきたが、2022年度は、ほぼ支障なく行えるようになってきている。しかし、学部内での感染事例が散見されることから、感染対策に配慮しながら教育活動を行った。 化学療法学講座は、抗がん剤とがん薬物治療を主たる研究テーマとする。この分野は、どちらかといえば医学研究者が多く、薬学でがん治療を専門とする講座は全国的にみても多くはない。そうした中で、化学療法学講座は、がんの基礎生物学から抗がん剤の開発まで、幅広く研究を展開している。 近年のがん分子標的薬によるがん治療の進歩に伴い、がんにおける遺伝子変化などを診断して治療法を決定することが広く行われている。今やがん治療はバイオマーカー研究と個別化医療の時代である。化学療法学講座においても、新しいがん分子標的治療薬の効果に関係する分子の探索などが活発に行われている。 2020年以降、新型コロナウイルス感染症の流行のため、講座での研究が制限されてきたが、2022年度は、卒業研究・大学院生の研究もほぼ支障なく行えるようになってきている。しかし、学部内での感染事例が散見されることから、感染対策に配慮しながら研究活動を行った。 化学療法学講座は、2004年4月に、杉本芳一の教授就任と同時に発足した。当時は共立薬科大学薬学部であった。2006年より薬剤師を目指す薬学教育は6年制となった。また、2008年に法人合併により慶應義塾大学薬学部となった。2019年より、近藤慎吾助教と加藤優助教が講座の教員となって、現在の講座体制になった。 杉本芳一は2023年3月で退職となり、化学療法学講座は19年間で終了する。2023年4月には新しい教授が着任する予定である。新しい講座の活躍に期待したい。 原著論文(英文) 1. Takahashi M, Okamoto Y, Kato Y, Shirahama H, Tsukahara S, Sugimoto Y, Tomida A. Activating mutations in EGFR and PI3K promote ATF4 induction for NSCLC cell survival during amino acid deprivation. Heliyon, in press. 2. Miyazawa M, Yamamoto Y, Katayama K, Sugimoto Y, Noguchi K. Kaposi's sarcoma-associated herpesvirus replication and transcription activator protein activates CD274/PD-L1 gene promoter. Cancer Sci, in press. 3. Morimoto K, Ishii M, Sugimoto Y, Ogihara T, Tomita M. Inhibitory effect of dextran derivatives on 6 化学療法学講座 94 化学療法学講座

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