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補助事業名称 文部科学省 戦略的研究基盤形成支援事業
研究プロジェクト名 創薬ルネサンス:既承認薬の潜在能力を引き出す体内資源活用の研究基盤形成
研究代表者 教授:三澤日出巳
研究期間 平成26~28年度

研究概要

新薬開発は、莫大な費用と時間が必要とされ、数万分の一といわれる低い成功確率を乗り越えなければならない困難なプロセスであるが、近年その傾向が顕著に加速している。特に、臨床試験で発見される副作用や体内動態の悪さ、或いは動物で見られた有効性がヒトでは再現できないことなどが要因となり、世界的に見ても新薬開発は停滞している。この様な環境下で、近年急速に解明が進む microRNA (miRNA) などの新規体内資源をターゲットとする創薬が、薬学の新たな課題となってきている。また一方で、ヒトでの安全性と薬物動態情報が充分に蓄積されている既承認薬のターゲット分子や作用パスウェイを、オミックス等の手法で解析し、別の疾患治療薬として開発する創薬戦略:ドラッグ・リポジショニング(DR) が注目されている。本プロジェクトでは、薬学研究科の多様な研究者が集結し、新たな体内資源に光をあて、既承認薬を活用した創薬のパラダイムシフトを牽引するための研究拠点の形成を目指す。

薬物治療学、病態生理学、化学療法学、薬物動態学、有機合成化学、生薬学・天然物化学、レギュラトリーサイエンス、医薬品情報学、医療経済学などの幅広い領域の研究者が集結し、薬学領域での対応が課題となっている新たな体内資源と既承認薬の活用のための統合的・戦略的な方法論の創成拠点となる「創薬研究センター」を設立する。ここでは、創薬基礎研究者と臨床薬学やレギュラトリーサイエンス研究者が密接な連携を図り、既承認薬をより有効に使用するために必要な薬事行政や規制当局の新たな枠組みを提言することも目標とする。さらに、医学研究科(安井正人教授;薬理学、吉村昭彦教授;免疫学)と理工学研究科(佐藤智典教授;糖鎖生命工学、栄長泰明教授;機能性材料工学)からもアドバイザリーボードとしての参加を得て、学部間連携を強化するとともに、慶應義塾大学の創薬推進力を高めるための研究コアの一つとして、医薬品開発の死の谷を乗り越えるための戦略統括機能を担う。

研究者を3つのサブグループに分け、平成26〜28年度の3年間に、①疾患の分子病態の解明と体内資源の有効活用に基づく新たな治療戦略の構築、②既承認薬のリポジショニングと化合物の高度合成制御技術の開発、③レギュラトリーサイエンスおよび新規医療技術評価法と安全対策戦略の構築、を行う。このために、初年度に、各研究を横断的につなぎ、創薬研究の統括機能(研究拠点)を担う「創薬研究センター」を設立する。「創薬研究センター」はセンター長、センター運営委員会、アドバイザリーボードからなり、薬効を最大限に発揮できるような薬物デリバリー・システム、治療成績をモニタリングできるバイオマーカー探索、既承認薬の体内動態上の問題点を再評価する技術基盤の開発、などの機能も付置する。研究施設としては、初年度において、in vivo モデルでの薬効評価に必須であるSPF動物飼育施設の整備拡張を行い、「創薬研究センター」の充実を図る。

プロジェクトの研究体制

(平成28年4月1日現在)

グループA:新たな体内資源の解析と創薬応用

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研究者名 職名 プロジェクトでの研究課題 プロジェクトでの役割
齋藤 英胤 教授 消化器がん幹細胞を標的とした新たな核酸医薬およびエピジェネティクス医薬の開発 がん幹細胞に対する miRNA とエピジェネティクス医薬の効果の解明
齋藤 義正 准教授 同上 同上
田村 悦臣 教授 miRNA を標的とした新規抗がん剤の探索 miRNA の発がんプロセスに寄与する分子機構の解明
多胡 めぐみ 准教授 同上 同上
三澤 日出巳 教授 内在性毒素類似蛋白質(プロトトキシン)を利用した炎症・免疫制御の新戦略 プロトトキシンの標的蛋白質の解明と創薬応用
杉本 芳一 教授 ABCトランスポーター阻害薬の創製とその効能評価 がん薬物療法の有用性の増大と副作用防止のための戦略の構築
野口 耕司 准教授 同上 同上
金澤 秀子 教授 アミノ酸トランスポーターをターゲットとしたDDSおよび創薬バイオマーカー探索のための蛍光プローブの開発 がん細胞特異的なドラッグデリバリーと可視化技術の構築
中村 智徳 教授 和漢薬・漢方薬と西洋医薬の併用における適性性の判定に必要なバイオマーカー探索 古来より用いられてきた和漢薬の最新薬物治療における新たな活用方法の開拓

グループB:既承認薬のリポジショニングと化合物の高度合成制御技術

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研究者名 職名 プロジェクトでの研究課題 プロジェクトでの役割
服部 豊 教授 致死性造血器腫瘍克服のための標的分子探索および創薬研究 既承認薬ライブラリーを用いたハイリスク骨髄腫治療薬のスクリーニング
登美 斉俊 教授 胎盤関門分子機構に基づく妊娠期薬物治療の安全性再評価システムの構築 妊婦への適用を目指した既承認薬DRによる層別化薬物治療の推進
木内 文之 教授 ドラッグリポジショニング(DR)のための漢方薬の生薬成分パターンの解析とオリゴ糖鎖ライブラリーの構築 漢方薬およびオリゴ糖鎖のDRのための推進基盤の整備
増野 匡彦 教授 肝毒性を示す既承認薬の代謝活性化を回避した改良型医薬品の創製 肝毒性を示す既承認薬の代謝活性化機構の解明と有機合成化学による構造変換
大江 知之 准教授 同上 同上
須貝 威 教授 酵素触媒を活用する創薬候補化合物の位置・立体選択的修飾 プロドラッグ・代謝生成物の選択的構造変換およびプロセススケールの合成

グループC:レギュラトリーサイエンスおよび新規医療技術評価法と安全対策戦略の確立

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研究者名 職名 プロジェクトでの研究課題 プロジェクトでの役割
漆原 尚巳 教授 ドラッグリポジショニング(DR)の開発戦略および安全性リスクマネジメント アカデミア領域での安全性リスクマネジメントの枠組みとDR開発申請戦略の最適化
望月 眞弓 教授 既存データベースを利用したアンメット・メディカル・ニーズの掘り起こしと開発戦略立案の効率化 稀少疾患データベース、安全情報データベースの統合
橋口 正行 准教授 同上 同上
鈴木 岳之 准教授 医薬品開発時に想定すべきコスト・ベネフィットの薬学・経済学横断的検討 最適化医薬品開発のコストおよび収益性の検討と新薬開発支援制度への提言

公開シンポジウム

成果報告会

日時:
平成28年8月30日(火)13:30~17:30
場所:
慶應義塾大学薬学部・芝共立キャンパス 1号館地下 マルチメディア講堂

慶應義塾大学薬学部 創薬研究センター開所記念 第1回慶應の薬学シンポジウム

日時:
平成26年3月11日(水)14:00~17:30
場所:
慶應義塾大学薬学部・芝共立キャンパス 1号館地下 マルチメディア講堂

成果報告書