薬学科の学生は、専ら国家試験合格に必要な知識を身につけるために6年間を過ごすわけではありません。薬剤師には、薬を取り扱うプロフェッショナルとして、人の命と健康な生活を守る責任があります。そのため、6年間の大学生活を通じて、薬を使いこなすための知識や技能だけでなく、医療人としての使命感、倫理観や、コミュニケーション能力も身につける必要があります。さらに、慶應義塾大学薬学部では、未来の薬学を先導する人材の育成を特に重視しており、自己研鑽を続けるための科学的知識や能力、医療上の課題を解決するサイエンティストとしての能力の養成を重視したカリキュラム編成としています。
基盤教育(*1):1年次では、物理分析化学、有機化学、生命科学など薬学の基盤となる領域を中心に学びます。薬学は総合科学であり、薬の性質を決める化学構造、薬の含有量などを調べる分析方法、薬が作用する臓器、細胞の機能など、広範な領域を学ぶ必要があります。講義だけでなく、実験や観察などを行う実習にも1年秋学期以降、継続的に取り組みます。倫理観、使命感や、コミュニケーション能力は、6年間かけて醸成します。1年次から、早期臨床体験、社会的活動など体験学習、症例などを題材にしたグループディスカッションなども行われます。
専門教育(*2):2年秋学期になると、疾患の病態と用いられる薬の作用、投与量の計算、薬の剤形など、薬と深く結びついた知識の学習に発展します。環境、疾病予防、食品栄養など、地域保健・福祉に関わる科目も学びます。
実務教育(*3):3年秋学期以降は、薬剤師として薬物療法を実践するために必要な科目が中心となり、実習も、薬剤師業務のシミュレーションが中心になっていきます。
4年次には大きな山があります。4年次の終わりから薬局・病院での実務実習が始まりますが、その前に薬学共用試験を受け、実習生として患者の前に立つ資格を有しているかどうか、確認を受ける必要があります。
実務実習(*4):医療施設の実務実習指導薬剤師の指導のもと、実際の調剤を行い、直接患者さんに接する、計22週間の参加型実習です。医療現場に加えて、学校薬剤師など地域保健での経験も通じ、薬剤師として求められる実践的能力を身につけ、医療の担い手としての倫理観や使命感も醸成します。医師・看護師などと連携して最善の医療を提供する、チーム医療についても実践的に学びます。
卒業研究(*5):4年秋学期からは、約2年をかけた卒業研究にも取り組みます。自ら課題を見出し、研究を通じて解決することは、社会をより良くするために薬剤師が果たすべき使命です。研究活動の場は、薬学部内だけでなく、学内外に広く開かれています。卒業研究を通じて論理的思考能力と研究マインドを醸成し、卒業後に未来の薬学を先導する役割を果たすことを大いに期待しています。卒業研究の成果は、大学内だけでなく、国内外の学会や論文で発表する場合もあります。
高年次選択科目制度(*6):6年次では以下の4つのコースから1つを選択します。これまでに培った知識や経験を生かし、個々の進路や興味、適性などに応じて、自身の持つ資質や特性を磨き上げます。
研究者としての博士(薬学)の学位と、医療に通じた薬剤師の資格を兼ね備えたファーマシストサイエンティストは、グローバル化が進む医療・医薬品研究開発領域で活躍するためのパスポートです。慶應義塾大学薬学部は、博士課程への進学を大いに推奨しています。
薬学部共用試験とは薬剤師資格を持たない薬学生が実務実習へ臨む前に「実習生の質的保証をする」ために受験する全国の大学で統一された試験のことです。
OSCE(Objective Structured Clinical Examination;客観的臨床能力試験)、CBT(Computer-Based Testing)があり、2つの試験に合格して初めて実務実習へ臨むことができます。
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実施日程 | 合格者数 | 合格基準 | |
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CBT | 本試験 2024年1月24日、25日 再試験 2024年2月28日 |
140名 | 正答率60%以上 |
OSCE | 本試験 2023年12月3日 追再試験 2024年3月1日 |
144名 | 細目評価70%以上 概略評価5以上 |
共用試験 | 140名 |