リアルワールドデータ解析と革新的分析技術確立によりバイオ医薬品の最適治療に資するエビデンスの構築を目指す

研究室の概要

統合臨床薬理学講座では、抗体医薬品を含むバイオ医薬品の実臨床(リアルワールド)データ解析や質量分析技術を活用した体内動態研究を実践しています。貴重な患者検体・臨床情報などを用いて研究を遂行することを大きな特徴としています。また、他研究機関や企業などとの共同研究により、革新的技術を活用したバイオ医薬品の新規分析手法の開発も推進しています。
研究活動を通じて倫理観・使命感を養い、薬剤師研究者(Pharmacist Scientist)ならびに薬科学研究者(Pharmaceutical Scientist)としての志を持った人材を育成します。また、問題発見能力、客観的判断能力、発想力ならびにチーム力を養成します。国内外で学会発表や論文発表などを行うことで研究の魅力に触れるとともに、勝負の世界を実感してもらいます。

研究テーマ例
  • 新規分析手法を用いたバイオ医薬品の体内動態に関する基礎研究
  • リアルワールドデータを活用した抗体医薬の個別化医療を目指した臨床薬理研究
  • 抗体医薬品TDMの実用化を目指した臨床疫学研究

統合臨床薬理学

研究背景

新規モダリティ医薬品と言われる細胞治療、核酸、抗体などのバイオ医薬品が開発され、がんや自己免疫疾患などのさまざまな難病に対する薬物治療は大きく進展してきました。しかし、治療の中で有効性の消失や副作用発現などを経験する患者が依然として存在します。また、バイオ医薬品は高額であり、徒らな使用は国や患者に大きな負荷となります。臨床現場では、患者ごとに最適な医薬品の選択や用量調節、投与中止の判断、副作用マネージメントなどの個別化薬物治療を可能とする治療アルゴリズムの構築が切望されています。
バイオ医薬品は従来の低分子医薬品とは異なった薬理機序や体内動態特性を示すことから、そこには学術的に未踏の領域が広がっています。このような新規医薬品において、その有効性や安全性に関する新しいエビデンスの構築こそが、個別化薬物治療実現の要となります。

□ 革新的分析技術による真の薬物動態評価

糖タンパク質を実体とする抗体医薬品は投与後生体内で構造が変化することがあり、その変化が薬理活性や体内動態特性に影響を及ぼす可能性が示唆されています。質量分析技術から得られる構造データと薬理評価から得られる活性データを統合的に分析することにより、抗体医薬品の真の薬物動態解明に繋がります。

□ リアルワールドデータ解析を通じた治療最適化

医薬品開発の治験では、主に無作為化比較試験が実施されます。薬効評価において効果的・効率的な試験計画となりますが、実臨床と比較して被験者や試験期間が限定されています。多様な患者集団から構成され長期間の治療が行われる臨床現場で医薬品適正使用を推進するためには、リアルワールドデータを活用した観察研究の展開が必要です。

統合臨床薬理学