薬学部受験生大学院受験生在学生卒業生企業・研究者ご家族サイエンストピックス 2024/12/10

薬学部長主催 慶應医学賞サテライトシンポジウム2024 "AI-Driven Life Science and Drug Discovery"開催

11月21日(木)、芝共立キャンパス中講堂において、薬学部長主催の慶應医学賞サテライトシンポジウム2024 "AI-Driven Life Science and Drug Discovery"が開催されました。
200名を超える学生、教職員が参加し、中講堂は満席、副会場の255教室にも中継配信する大盛況となりました。
本シンポジウムは、第29回(2024年度)慶應医学賞受賞者であり、2024年ノーベル化学賞受賞者のデミス・ハサビス 博士(Google DeepMind社Co-Founder兼CEO)をお招きしてのインタラクティブトークと、研究者3名による講演で構成されました。

有田 誠 薬学部長の開会挨拶に続き、牧野 浩史 教授(慶應義塾大学医学部生理学教室)、池田 和由 博士(理化学研究所計算科学研究センター創薬化学AIアプリケーションユニット ユニットリーダー)、小山 尚彦 特任教授(慶應義塾大学ヒト生物学-微生物叢-量子計算研究センター(Bio2Q))が講演しました。ハサビス博士や参加者から多数のコメント・質問が寄せられ、活気あふれる研究発表となりました。
続くインタラクティブトークでは、ハサビス博士が登壇し、長谷 耕二 教授(薬学部生化学講座)の司会のもと、事前に寄せられた参加者からの質問に答えました。また会場の学生からの質問にも熱心に答えてくださり、学生達にとって貴重な経験となりました。
三澤 日出巳 薬学研究科委員長の閉会挨拶のあと、参加者全員で記念撮影を行い、盛況裡に幕を閉じました。

シンポジウムに参加した学生のレポート

公平 実希 君(薬学研究科薬科学専攻後期博士課程2年 分子創成化学講座)
 
AIの応用可能性の幅広さに由来するのであろう、研究における境界領域の面白さを改めて実感するシンポジウムであった。
まずAIと神経科学の相互作用についての話から始まり、創薬における理論計算の活用や、リード化合物の最適化段階でのAIの有用性について等ご講演いただいた。基礎研究と応用研究という異なる視点を踏まえた3つの講演を併せて拝聴し、一つの研究領域にとどまらないことの重要性を感じる貴重な機会となった。特にAIや計算科学といった技術は応用研究のような実験科学とは一見乖離して見えるが、分野横断的に導入することで双方に生まれる価値が確かにあり、積極的に取り入れるべきであることを改めて感じた。応用研究からのフィードバックが基礎研究にさらに届きやすいようなコミュニティの設計が、今後の有用な技術の進展に繋がるのではないかと思う。

ハサビス博士のインタラクティブトークでは、キャリアからプライベート、研究まで多様なお話をしていただいた。大学院時代に神経回路の研究を追究しつつも、最終的にAIによるタンパク質の構造予測でノーベル化学賞受賞を達成しているというキャリアの幅は興味深い。生物における認知神経科学とAIとの親和性をここでも感じ、異なる研究領域の連携を改めて実感した。また、ハサビス博士は製薬会社とも共同研究を複数展開している。AIを構築する研究者ならではの視点で、創薬における"人の研究者"が担うべき役割についての質問にも真摯に答えていただいた。役割を全うできるよう薬学生が学生時代に何を体得すべきか、気付きを与えてくれたように思う。またプライベートではご子息とフットサルやゲームを楽しむという話には多くの学生が親近感を覚えたようだ。プライベートも仕事も楽しもうとする姿勢は、研究の中にも遊び心が垣間見えるところと通じるものがあると感じた。キャリアの幅にも関係する話だが、そもそもAlphaFoldは学生時代、友人とタンパク質のフォールディングの話をしていたことに繋がるというエピソードはやはり印象的である。タンパク質の構造解析は論文一つとっても困難の二文字で表される印象だが、友人との他愛もない会話からこの研究エリアを、しかもその専門分野の人とは全く異なる技術を用いて刷新した。さらにこれがAlphaGoから繋がっていることを考えると、一つの研究を別角度から見て俯瞰的に繋げる柔軟性と好奇心には刺激を受けるばかりである。
現状に満足しない姿勢が非常に印象的であった。楽しみ続ける人には敵わないと感じるとともに、私も視野の広い研究者になりたいと改めて思う良い機会だった。



有田薬学部長による開会挨拶

有田薬学部長による開会挨拶

牧野教授の講演

牧野教授の講演

池田博士の講演

池田博士の講演

小山特任教授の講演

小山特任教授の講演

講演者にコメントするハサビス博士

講演者にコメントするハサビス博士

インタラクティブトーク

インタラクティブトーク

学生からハサビス博士へ質問

学生からハサビス博士へ質問

熱心に質問に答えるハサビス博士

熱心に質問に答えるハサビス博士

三澤薬学研究科委員長による閉会挨拶

三澤薬学研究科委員長による閉会挨拶

薬学部屋上庭園にて記念撮影

薬学部屋上庭園にて記念撮影

シンポジウム参加者全員で記念撮影

シンポジウム参加者全員で記念撮影