脂質代謝と病態・バイオロジーに関する研究

脂質はエネルギー源、生体膜成分、シグナル伝達分子としての機能をもち、生命活動において必須です。私たちはこれまでに、生体内の脂肪酸やリン脂質の代謝を網羅的かつ定量的に把握するためのメタボローム解析システムを構築し、炎症・代謝性疾患の制御において脂肪酸代謝バランスが重要であることを示してきました。中でも、EPAやDHAなどω3脂肪酸が体内で活性代謝物に変換され、積極的に抗炎症作用を発揮していることを見出してきました。これら内因性の炎症制御性物質をメタボローム解析により包括的に捉え、その生成機構や作用機構を分子レベルで明らかにすることは、炎症を基盤病態とする様々な疾患の病態解明および新しい治療法の開発につながることが期待されます。さらに、新しい生理活性物質(機能性脂質)の探索や新しい創薬標的の同定を志向した、リピドミクス新技術の開発と応用を進めています。

Fig1
図1 生物における脂質の三大機能と構造多様性
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図2 脂質代謝バランスと病態・バイオロジーとの関連