教授堀 里子
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専任講師今井 俊吾
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助教木崎 速人
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特任講師土屋 雅美
特任助教柳澤 友希

【研究目標】

医薬品は、製造販売承認を受けた時点での情報は十分ではありません。したがって、市販後に見出されるさまざまな課題(医薬品の有効性・安全性情報、インシデント・アクシデント事例、ニーズ等)を育薬研究により解決し、得られた新しい情報を付加してより正しく安全に医薬品を使っていくこと、それらの情報を創薬にフィードバックすることが重要です(図1:医薬品開発の流れと「情報」)。このサイクルをしっかりまわすことが、医療現場においても、そして医薬品にとっても望ましい姿であると考えられます。
医薬品情報学講座では、医薬品適正使用と育薬の推進を研究目標として、臨床現場における諸課題(=市販後情報)を効率的に見つけ出す仕組みを新たに作り、そこから見つけ出した課題を種々のアプローチで解決し、最終的には新規の医薬品情報やシステムの実装といった形で臨床現場に還元したり、医薬品の改良・進化の提案につなげることを目指します(図2:研究の基本理念・目標)。

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【図1】
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【図2】

【研究内容】

  • 市販後情報の収集・共有と活用に関する研究
    本講座では、地域医療・介護の現場から、医療者等(薬剤師/医師/介護士/栄養士/登録販売者/医薬品卸MS)や患者を通じて市販後情報を収集・共有するシステム(プラットフォーム)を構築・運用しています。これらのシステムを介して集積された膨大な市販後情報を活用して、医薬品使用におけるトラブル・ミスの事前予測法の確立や医薬品の製剤や包装の事前最適化を進めています。
  • 市販後情報の解析・評価、実装に関する研究
    市販後情報収集・共有システム等を通じて捉えた諸課題を解決するための研究を行っています。例えば、医薬品や健康食品の有効性・安全性・経済性に関する新規評価法の確立や新規情報の創製、投薬ミス回避システムの開発、臨床薬理学的手法や疫学的手法を用いた薬物治療の個別化に関する研究が挙げられます。
  • 医薬関係者(医療者・患者等)間コミュニケーションに関する研究
    薬物治療上問題が生じた事例を解析していくと、薬学的知識のみでは解決できない問題が山積していることが分かってきます。その中には、患者・家族・介護者による薬の誤用、薬に対する誤解・不信、医療者がそれらの患者情報を患者と共有し、適切な意思決定につなげられていないといった医療コミュニケーション、EBM実践上の問題も挙げられます。これらの問題解決のために、社会科学的なアプローチ法を用いた研究を行っています。

医薬品情報学の研究では、情報を扱う多くの学問領域、さらに社会科学の学問領域とのインタラクションが求められます。本講座でも関連分野の研究手法の導入や異分野研究者との共同研究に積極的に取り組んでいます。また、研究のフィールドとなる地域医療・介護の現場で働く医療者(薬剤師をはじめとする多職種)や医薬品関連企業・団体との協働で進める研究が多いのも講座の特徴です。臨床現場や育薬への還元を常に念頭におき、自由で柔軟な発想を大切にしながら、医薬品適正使用と育薬(薬の安心安全)を推進する研究を進めていきたいと考えています。

The aim of our research is to promote the proper use of drugs and the post-marketing development of drugs (IKUYAKU in Japanese, which may be translated as "fostering drugs"). For that purpose, we develop an efficient system to collect information on clinical issues (including efficacy and safety of drugs, incidents/accidents involving drugs, and needs for pharmaceuticals) from medical care staff and patients. Our work will include research on development of systems to avoid medication errors, personalization of pharmacotherapy, and so on. Key features of our approach will be the use of qualitative research methods and collaborative studies with researchers in other fields.

【大学院への入進学を希望している方へ】

慶應義塾大学大学院薬学研究科では大学院生を広く募集しています。当講座でも医薬品情報学の研究を一緒に展開してくれるエネルギーあふれる大学院生がメンバーに加わってくれることを願っています。興味のある方の見学も受け付けています。
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