美しく機能もある
分子を創り出す

「まだ誰も見たことのない構造をもった分子をデザインしたい」。
そんな分子は今までにない機能を備えている可能性があります。
見た目が美しく、機能も持ち合わせた、新しいものを創り出すことが
小林さんの研究テーマです。

薬学研究科 薬科学専攻後期博士課程3年

小林 透威(コバヤシ トオイ)

(2023年12月現在)

小林 透威(コバヤシ トオイ)

撮影:慶應義塾大学薬学部

より洗練された構造をデザインする

薬ならより多くの人を救えて社会に役立つと思った小林さん。学部から修士までは、薬を開発する医薬品化学という講座にいました。授業を受けるうちに、それまで暗記でしかなかった分子構造のおもしろさを感じるように。「化学」の理解が進むと、特に、構造式から分子をみる魅力にとりつかれました。「例えば、抗がん剤の分子。大きな環が複数個もあるような複雑な構造が薬となって効果を発揮すること以上に、これを誰かが創り出したことに感銘を受けました」。そこで、博士課程では「化学」に特化した研究テーマに軸を変えました。日々、小林さんは好奇心に引っ張られて多様な論文を読みあさることで、つくりたい分子のイメージを頭の中に描き出しています。思考を重ねていくと、分子の組み合わせを具体的に考えることにつながります。そうして世の中にない機能をもった分子をつくり出すことを目指しています。

小林 透威 (コバヤシ トオイ)画像1
撮影:慶應義塾大学薬学部

本当に存在できる分子構造か

実際に「新しい分子を創り出す」にはどうしたらいいでしょうか。例えば、メタン(CH4)を構造式で表すと、炭素を中心に四方向の棒の先に水素を書きます。構造式でつながりが可能でも実際につくれるかは別問題。「こんな分子をつくりたい!」と頭に浮かぶアイデアが成り立つか確かめるために、スーパーコンピュータを稼働させます。小林さんは毎朝計算にかけ、翌日に出る結果からまた組み立て直して計算することを繰り返しています。これまでに、研究例の少ないキノリン環を酸素原子で接続することで立体化させ、新たな機能を見出すことに成功しました。一方で、酸素の他の原子での立体化も目指すものの、2年以上苦戦しています。なぜ諦めずに挑戦しているのか。「エネルギー的に成立することは確かなんです。必ずやつくれると力がみなぎっています」。小林さんのあくなき挑戦は続きます。

小林 透威 (コバヤシ トオイ)画像2
撮影:慶應義塾大学薬学部
Q.あなたにとって薬学とは?
A. まだ見ぬユニークな性質・姿の化学構造を創り出すこと