
私たちのからだは歯車がかみ合うように、さまざまな
要素が組み合わさって連動しています。
病気になると、健康なときにすべてうまく調和して回っていた
からだのしくみのどこかに不調が起きます。
病気を治すポイントを見つけるには、この歯車のような複雑なしくみの解明が必要です。
米津さんはその解明にせまることで、
薬のタネにつながる研究に邁進しています。
薬学研究科 後期博士課程2 年
米津 好乃(ヨネヅ ヨシノ)
(2024年12月現在)
撮影:慶應義塾大学薬学部
「健康なときには起こらない現象が起きてしまう」。これが病気になることの不思議さだと米津さんは話します。病気になって起こる現象もあれば、動きが止まってしまうものもあります。脳や脊髄などの中枢とからだの細部は血液でつながっているのです。健康であれば脳に入りにくい物質が、病気になると血液を介して脳へ入ってしまい病態を引き起こします。米津さんは脊髄損傷の患者の神経機能に障がいがあらわれるしくみを、血液に着目して明らかにしようとしています。血液によって中枢に運ばれた細胞由来の因子が、ど のように病態を引き起こしているのか。運ばれないようにするにはどうすればいいのか。病態にむかう現象を止める部分が解明できれば、中枢疾患の治療薬の開発につながる「タネ」になります。
米津さんは、医療制度が十分でない海外に住んでいた中学生時代に薬の可能性を大いに感じました。薬さえあればどこの国でも同様に救うことができる。どこでも人の命を救える薬をつくりたいと薬学部へ。 入学後、医学、生物学、化学といった幅広い分野から学びを得て、さらに外部連携先で農学、理工学部の研究者と議論を交わすことで自分の軸となるテーマができあがっていったそう。中枢といろいろな臓器の関係を研究し、将来は病気を治すだけではなく、予防につながる方法まで解明したいと米津さん。「遠い道のりで、生きているうちに見つけられるかわからないけれども、薬を生み出していきたい」。研究で得られるいくつものデータを組み合わせたときに見えてくるものがあることが楽しいといいます。米津さんのなかにある数々の知の歯車もかみ合って回転しながら、新たな知を生み出し続けていきます。